兼ねてからサッカー日本代表に対するサッカー解説者やマスコミの方々の取り扱い方には問題があると感じていましたが、改めてそう再確認できる出来事がありました。
サッカー引退後はタレントとして活動し、東スポ評論家としても活動する武田修宏氏が、「ハリルホジッチではワールドカップは勝てない」と発言したのです。
武田修宏氏は、ハリルジャパンではロシア大会での躍進は期待できないとし、今からでも監督を代えるべきと。
その理由として、縦に早いサッカーを求めるハリルホジッチのスタイルがあり、それでは守備的な相手は崩せないということのようです。
その戦術がアフリカで結果に結びついたのは、あくまで身体能力が高くスピードが豊かなアフリカ人の特性に上手くハマったからと推測しているようです。
そのため、日本人の特性とハリルホジッチの哲学は噛み合わないと武田修宏氏は見ているようです。
そして最後には、ハリルホジッチはワールドカップ仕様のサッカーを今から選手に植え付けるだけの時間の哲学を持っていないとまで言い切りました。
現役時代は「ごっつあんゴール」と言えば武田と言われた彼がここまで言い切るのには驚きでしたが、それ以上に監督しか責めない姿勢に、他の代表OBと同じ臭いがしたのです。
日本代表OBは選手の批判はご法度?その理由とは?
(出典:https://grapee.jp/291753)
サッカー日本代表の試合において、解説として登場する代表OBの方々は基本的に選手の批判はしない傾向があります。
気になる選手がいたとしても、直接的に批判するのではなく、やんわりとポジティブに口撃する感じになりがちです。
例えば、今後の代表入りに暗雲が立ち込めている本田圭佑について、テレ朝の代表戦でおなじみの解説者、松木安太郎氏の発言です。
近年の本田と言えば、どうしてもスピードがないため、彼にボールが渡ることで一度スピードダウンすることが多くなります。
特に、ワールドカップアジア最終予選では、その傾向が強く、ハリルホジッチが求める速攻型には明らかに向いていないタイプの選手と言えます。
最近は試合感や年齢的なこともあってか、プレーの判断スピードや真ん中にこだわりすぎるせいかポジショニングも良くない状況になりがちです。
しかし、松木安太郎氏に言わせると、「本田のところでタメができる」という表現へとポジティブな方向へと変わるのです。
松木安太郎氏が極端にポジティブなタイプということもありますが、それにしても極端すぎるように思えてなりません。
その他の解説者も軒並み選手を直接批判するケースは少ないのが現実です。
その理由として、選手を批判すると取材がしにくくなることやサッカー協会やスポンサーが嫌がるということがあります。
日本代表は日本サッカー界にとってはドル箱という立ち位置です。
親善試合で、明らかに代表の強化とは程遠いと思える対戦相手であっても、日本代表選という冠がつくことでそれなりの収益をあげることができます。
要は、日本で試合を組む込みに意味があるのです。
本来、日本代表の強化という名目であれば、欧州や南米に足を運び強豪国と試合をする必要がります。
しかしそれでは、テレビ放送による収入はあっても、入場料やグッズ販売、スポンサー収入などお金に繋がるものが日本で試合をする場合より極端に少なくなります。
これは、協会はじめとする日本代表ビジネスに関わる方にとっては面白くないのです。
そのため、できるだけ日本で試合を組む必要があることになるのです。
日本代表ブランドをできるだけ傷つけない。
これこそが、サッカー解説者に求められることなのです。(セルジオ越後氏は別ですが)
ハリルホジッチはその現状を理解した上での選手選考かも
(出典:https://www.jleague.jp/news/article/8823/)
ロシアワールドカップに挑むハリルジャパンの場合も、現時点では前回のブラジル大会までのスケジュールがベースで進むと見られていますが、それでは代表の強化には繋がらないでしょう。
格下な上に長旅で時差ボケ状態の相手に勝っても何の意味もありません。
前回のブラジル大会のときも、そのような試合で一方的な勝ち方を続けた結果、一部の選手がワールドカップで優勝できるかもしれないと錯覚を起こしてしまい、本大会で悪夢を見る結果となりました。
日本サッカーを世界レベルに押し上げるのためには、確かにお金は必要ですが、その使い方を間違えている今のお偉いさん方では代表強化は望めないのが実情です。
ハリルホジッチが海外組を重要視するのは、日本より明らかに高いレベルのサッカーを直接体感しているからに他なりません。
代表として厳しい戦いを積めないないのならば、個人レベルで欧州で経験を積んでいる選手を優先する。
それがたとえ試合に出場する機会が少なくても、世界トップレベルの練習をおこなっているだけでも違うという考え方がハリルホジッチにはあります。
現状の日本代表を取り巻く環境を思うと、ハリルホジッチのやり方もわからないではありません。
相変わらずなマスコミ報道の違和感
(出典:http://shooty.jp/8687)
このような日本代表を取り巻く環境は、当然のことながらマスコミ報道にも大きな影響を及ぼしています。
勝てば大々的に盛り上げ、負ければ「惜敗」という扱い。
たとえ完敗だったとしても、「◯◯のプレーに可能性を感じた」的な報道にして、ともかく次に繋がるという印象を植え付ける手法です。
このようなことは海外ではなかなかおめにかかれません。
悪ければハッキリ悪かったと取り上げます。
そうすることで、代表選手は緊張感をもち、次はこんな試合は許されないという意識を強くもつことになります。
しかし日本の場合は、「次頑張ろう」で終わりです。
それがよくわかるのが、先日のアジア最終予選のクライマックス前のイラク戦です。
アウェーながらもグループ下位に沈むイラクとの一戦は、勝ち点3を手にすれば、続くオーストラリアと最終戦のサウジアラビアとの戦いを優位に運べる状況でした。
しかし、暑さに負けた日本代表は引き分けがやっと。
この試合前には、「イラクに勝利してワールドカップに王手」という報道でした。
そして、引き分けや敗戦すると一気に大ピンチという煽り方でした。
しかし、引き分けでゲームが終わった瞬間から、イラク戦の反戦もそこそこに、「ホームで勝てばワールドカップ決定」というムードにチェンジ。
結果的にハリルホジッチの大胆な選手起用が的中し、ホームで強豪オーストラリアから完封勝利を収めてワールドカップ出場を決めました。
もしこの試合を落としていたら、アウエーのサウジ戦の結果次第ではプレーオフに回る可能性も十分にあるにも関わらず、イラク戦前後のマスコミ報道やサッカー解説者のほとんどが日本代表に緊張感を与えるような発言は行なっていません。
どこか過保護すぎる日本代表を取り巻く環境は違和感しかありません。
このような状態では、ブラジル大会のようなグループリーグでの惨敗の悪夢が蘇ってきてなりません。
日本サッカーの強化のためにも、いい加減メディアの報道姿勢も変わってほしいと願わずにはいられません。
日本代表が強くなればお金は後からついてくる
(出典:https://mainichi.jp/articles/20170830/hrc/00m/050/001000d)
ロシア大会まで1年を切る中、ハリルジャパンがどのような形でチームを固めるのか注目される中、やはり世代交代は一つの鍵となります。
今回のアジア最終予選が進む中、大迫や久保、原口といった選手たちが、これまで代表の中心であった、本田、香川、岡崎などのポジションを脅かす存在となりました。
ザッケローニ時代からの固定されていたメンバーたちにようやく風穴を開けたハリルジャパン。
中盤では井手口、最終ラインには昌子といった成長著しい若手も顔を出すようになりました。
こういった循環がなければ、代表内での競争心も高まりません。
思えば、本田や香川が中心の日本代表では、複数の選手がメンバーに選ばれることが当たり前で、それを前提にワールドカップへの思いを口にしていたことに違和感を覚えたものです。
今回の予選でも、一部のベテラン選手からそのような空気を感じましたが、本来は競争で勝ち取るポジションです。
日本代表においては、ながらくそのような当たり前のことが失われていたのでしょう。
しかし、若手の躍進、本田や香川の不調などもあり、着実に日本代表では世代交代が進む気配が出ています。
本大会までの時間を考えると、これからはそう多くの選手を試すというわけにはいかないはず。
現在招集しているメンバーを中心にチームを固める必要があります。
それでも、王手スポンサーの意向や協会のビジネス戦略のため、ネームバリューのある本田や香川を外すという決断は期待できないのかもしれません。
そこにはハリルホジッチの権限以上のものが存在します。
もし今回、その悪しき流れを断ち切ることができれば、日本サッカーの未来は確実に明るくなるはずです。
サッカーにおいても、なんだかんだと言ってもお金がなければなにもできません。
しかし、目先の利益を追求するばかりに日本サッカーが停滞していては本末転倒。
強くなれば、世界で通用すれば、今までのように日本サッカーを軽く見るような風潮は無くなっていきます。
そうすれば、こちらからお願いしなくても相手から声がかかるようになります。
お金はそこからついてくる。
そういうものだと思います。
Jリーグに関しては、ダゾーンが高額でその放映権をスカパーから奪いました。
日本サッカーに大いなる可能性がなければありえない契約です。
だからこそ、妙なしがらみを超える決断があっても良い時期にきているのではないかと考えます。
日本代表をとりまくすべてのものが、時に厳しい目で代表チームを叱咤激励し高みへと導くような環境が構築されることを改めて願っています。