2015年の女子ワールドカップは、なでしこの連覇は残念ながら実現しなかったものの、前回大会同様に、大きな盛り上がりを見せ大会は幕を閉じました。
同時に、女子サッカーにおいては、やはりアメリカが抜きに出ていることを実感させられたワールドカップでもありました。
そんな中、前回のドイツ大会で、川澄奈穂美が輝いたように、今回のカナダ大会でもシンデレラガールが、なでしこジャパンから誕生しました。
それが、サイドバックの有吉佐織です。
今回初めてのワールドカップの舞台で、決勝トーナメントのオランダ戦ではゴールを決めるなど、なでしこジャパンのレギュラーの座を射止めました。
しかし、今大会のシンデレラガール有吉佐織が、年俸0円のアマチュア契約であるという現実には驚きを隠せません。
有吉佐織は、日テレベレーザに所属しているものの、年俸が貰えるプロ契約ではないため、普段は横浜市内のフットサル場の受付のアルバイトなどで収入を得ています。
こんな話を聞くと、やはりまだまだ女子サッカー選手の待遇面での厳しさが浮き彫りになってきます・・・。
女性版 長友?内田?有吉佐織の評価が海外で急上昇
その鋭い眼光から、なでしこのチームメイトである、大野忍が、有吉佐織に対して、「蛇に似ているから、アナコンダだ」命名しました。
女性に対してアナコンダはどうかと思いますが、今思えば、年俸0円でアルバイトで生計を立てているハングリーさが、その鋭い眼光に繋がっているのだと思います。
今回、有吉佐織の場合は、ワールドカップでの活躍によって、クラブ側がプロ契約を検討することになりました。
ただ、大会のMVP候補にまでなった有吉佐織だけに、海外からも注目を集めており、条件次第では、国内でのプロ契約を飛び越して、一気に海外クラブでのプレーも現実味を帯びています。
欧州では、男子日本代表の長友や内田に例えられるなど、大きな注目を集めており、ドイツやフランスでのプレーが実現するかもしれません。
年俸0円の苦労人、有吉佐織は、今後一体どのような選択をするのか注目ですが、ここで改めて日本の女子サッカーの待遇面での現実を振り返ってみたいと思います。
待遇における日本の女子サッカー選手達の現実とは?
男子サッカーと比較しては酷ですが、日本に限らず世界的にみても、女子サッカー選手の待遇とは決して良いものではありません。
男子サッカーと年俸などを単純に比較するのは、そもそもの規模や収益の違いなどもあるため、ちょっと違うとは思いますが、それを差し引いても、寂しい現実が日本の女子サッカーにはあります。
実際、なでしこリーグにおいても、プロ契約をしているのは、INAC神戸の澤穂希や川澄、海堀など数人とされています。
プロ契約とはいっても、年俸は約500万前後(推定)と言われています。
それでも、INAC神戸の場合は、プロ契約ではないまでも、契約社員として報酬が支払われるため、サッカーに集中することは可能です。
しかし、その他のクラブや社会人選手の場合、アルバイトや家族からの仕送りでサッカーを続けているというのが現実です。
前回大会以上の規模で大きな盛り上がりをみせたワールドカップの世界とは全く違う現実がそこにはあります。
今回、ワールドカップでの連覇は逃したものの、日本のサッカーファンに大きな注目を浴びたなでしこジャパン。
暫くは、なでしこリーグの客足も伸びるかもしれませんが、前回、2011年のW杯優勝の年と翌年は、国内リーグで神戸戦を中心に増加に転じたものの、2013年には、観客動員が半減しています。
このことからも、大きな大会やテレビでの中継があれば、目を向けるものの、国内リーグには、まだまだ関心のない国民が多い事を物語っています。
先ほどの、有吉佐織が年俸0円のアマチュア契約という現実も含め、妥当アメリカを目指すという意味でも、女子選手の底上げは欠かせません。
しかし、現状の待遇では、大きな進歩は望めないため、選手がサッカーに打ち込める環境と報酬を用意できるか否かが、今後の日本女子サッカーの発展には、必須となります。
今すぐどうこうは困難だとしても、サッカー協会や協賛企業、そして地域のサッカーファンの掘り起こしなど、取り組むべき課題は山のようにあります。
マスコミも、ワールドカップ準優勝と騒ぎ立てるだけでなく、普段から「なでしこリーグ」についても、もっと取り上げてみてはどうでしょうか?
女子サッカーを国内に根付かせるためには、ただミーハーではダメなのです・・・。
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