バルセロナのエースでありアルゼンチン代表のエースでもあるリオネル・メッシが、コパ・アメリカの決勝、チリ戦での敗戦後に代表引退宣言を行い、アルゼンチン国内はもとより、世界中のサッカーファンが衝撃を受けました。
決勝戦でPK戦の末にチリに破れたショックで感情的になっての引退発言とも一部では言われまいたが、事はそう単純ではなく、アルゼンチン代表に起きている様々な問題がメッシの代表離れへとつながったということになるようです。
疑惑が向けられているのが、アルゼンチンサッカー協会(AFA)でした。
コパ・アメリカで代表選手に大きなストレスを与えたAFAのずさんな準備
メッシの代表引退宣言以降、AFAの問題が一気に世界中のメディアを賑わせる事態になっています。
今回のコパ・アメリカへ出場するため、アルゼンチン代表チームはアメリカ行きのチャーター便が用意されていましたが、実は通常使用されているチャーター機とは大きな差があり、9時間のフライトはストレスと疲労が積み重なるものだったとメッシ自身がインスタグラムに投稿し、話題になりました。
アルゼンチンサッカー協会がチャーター機の予算をケチったとも受け取れるメッシの投稿ですが、さらには、大会に向けて、A代表の練習相手としてこれまで国際大会では帯同していた、U-20代表チームが、今回のコパ・アメリカでは帯同が見送られています。
いつもと違う、この2つの出来事だけでも、メッシに限らず疑問を感じた選手が少なくないのは容易に想像できます。
しかし、コパではこれだけではなく、アルゼンチン代表チームのキャンプ地でも多くの問題が発生していたようです。
滞在先のホテルでは、部屋の準備が出来ておらず、一行はロビーで長い時間待たされ、さらには食事の手配も滞っており、チームスタッフがサンドイッチを買いに走る始末。
これから大会に挑もうとするアルゼンチン代表にしては、あまりにもずさんな段取りです。
試合を行なう前から様々なストレスを受けることとなったアルゼンチン代表。
それでも、決勝戦まで勝ち上がったのでしたが、PK戦の末に破れるという失意の中、メッシの不満が一気に噴出した「代表引退宣言」とも受け取れます。
AFAの段取りの悪さの裏で不正による資金不足が明らかに
今回、メッシの代表引退宣言を受けて、一気に世界中から注目を浴びることとなった、AFA(アルゼンチンサッカー協会)ですが、コパ・アメリカでの代表チームのトラブルなどは、協会の資金不足が根底にあるとされています。
実は、代表チームを率いる、マルティーノ監督を始め、チームスタッフなどは、2016年2月以降、報酬が一切支払われていないことが判明したのです。
本来であれば、国内リーグの放映権などにおいて、国営放送もあり、政府から多くの資金が入っているはずのアルゼンチンサッカー協会。
しかし、その多くが使途不明ということが明らかになっています。
司法当局も捜査に着手する事態へとなり、アルゼンチンサッカー協会の不正が次々と明るみにでています。
事態を重く見たFIFAからも調査団が派遣され、当局から起訴されている、AFAのセグーラ会長に退任を命じました。
(出典:http://www.goal.com/)
その上で、FIFAとしてはアルゼンチンサッカー協会内に「正常化委員会」の設置を求めましたが、捜査を担当する裁判官がFIFAの介入を認めず、AFAはFIFAから除名される可能性まで出る事態となってしまいました。
そして、疑惑の渦中にあるセグーラ会長は辞任し、今月に入りアルゼンチンサッカー協会には首脳陣が不在というありえない状況が発生しているようです。
まさに、私腹を肥やす役員で腐れきっていたと言えるアルゼンチンサッカー協会。
一説には、メッシが代表チームにいることで、協会は親善試合などにおける協会に入る報酬が、1試合20万ドル弱から、100万ドル前後まで高騰していたと言われています。
まさにスーパースターであるメッシの恩恵を受けていたといえます。
しかし、そのお金が代表の強化に使われることはなく、セグーラ会長始め、協会の役員の私利私欲に使われていたとなれば、メッシでなくても代表引退したくなるのは想像に難くありません。。。
不正問題の余波でマルティーノ監督が突然の辞任
トップ不在のアルゼンチンサッカー協会は、リオ五輪開幕を1ヶ月後に控える中、チームを率いるマルティーノ監督の辞任を突如発表しました。
2014年のワールドカップ後に就任したマルティーノ監督は、優勝が期待されたコパ・アメリカで、2大会連続でチリに決勝戦で敗退したことで、アルゼンチン国内では、マルティーノ監督の解任を求める声があがりました。
そんな中、リオ五輪は予定通りマルティーノ監督で挑むと表明していいたアルゼンチンサッカー協会。
しかし、当のマルティーノ監督は、協会の不正問題に加え選手の招集についても問題があったようで、スタッフも同調する形で代表チームを離れることを決意したようです。
このあたりは、今年の2月から無報酬ということが無関係ではないのでしょう。
現在、アルゼンチン国内では、後任監督にスペインのアトレティコ・マドリードを率いる、シメオネ監督を推す声が高まっていますが、協会が今の状態ではとてもではありませんが望み薄と言わざる得ません。
不正にまみれたアルゼンチンサッカー協会。
サッカー大国の名に恥じない体制へと是が非でも仕切り直してほしいものです。